埼玉県本庄市 戸塚 和登 氏

バイブロスーパーソイラー導入
ミニトマト栽培土づくりに貢献

戸塚 和登 氏

東京・上野駅から100㌔余り、群馬県との境に近い埼玉県本庄市。統計では家族経営、組織経営合わせて790ほどの経営体を数え、野菜類を栽培する経営体数が470弱で最多となる。ちなみに稲作は280余で、借地や作業受託で規模を大きくしなければ割に合わない状況にあることが分かる。

今回お訪ねした戸塚和登氏(28歳)は、3代目としてハウス園芸に精魂を傾ける若手農業者。大学で施設園芸を専攻、卒業して各種施設園芸関連資機材を供給する企業に1年間研修に入った後、実家に戻って就農した。「休暇の時に父の手伝いをしたりはしていました。大学入学時は、農業は1つの選択肢と考えていたのですが、勉強しているうちに自分に合った仕事かなと思い農業の道を選びました」と。研修先が実践的な指導を行っていたこと、また、父や研修生OBなどからの指導や情報交換を得て、戻ってきてからもさほど戸惑いはなかったとふり返る。

ハウス3棟でミニトマト栽培

今年の作付け状況は、5000平方㍍(ハウス3棟)のミニトマトは父親と和登氏が管理に当たり、1000平方㍍弱のハウスレタスとメロン(パイプハウス2棟)は祖父と祖母が担当。若干の田はよそに貸し出し、収益率の高い施設園芸専門の営農形態としている。

ミニトマトについては、以前から養液土耕栽培を進めてきており、出荷や資材調達の共同体となる組合のミニトマト部会全体でこの方式をとり、出荷先は生協になる。品種は部会で採用するやや粒が大きめの小鈴エル。「農協出しよりは価格が安定しているし、条件がいい」とのこと。ちなみに祖父母が担当するレタスは組合出荷、メロンは直接販売だ。

ハウスで生育中のミニトマト

土耕栽培のポイントはやはり土づくり

土耕栽培のポイントはやはり土づくり。組合からぼかし肥の供給を受け、元肥、追肥を行う一方、土壌の性状そのものの改善を図るため、川辺農研産業㈱の「硬盤破砕用バイブロスーパーソイラーSV2―BD」を昨年導入した。

新規に建てたハウスの土地は、もともとブロッコリを露地栽培していた畑で、3作を経過する中、土壌が固く水が表面に溜まる、根の張りがよくないせいか長段を穫っていると最後のほうは茎が細るなどの問題があった

ハウス内の硬盤破砕

土を変えず耕盤破砕

「改善したいということで研究してきて、近隣ではプラソイラを使っている人がいるんだけれど、下の土を上にあげてしまうので、せっかく土づくりに努力してきた成果が損なわれる。また、この辺はもともと土が硬いところなので、PTOを使わない機械では効果が出ないのではないかといった、色々な検討を進めた結果、バイブロスーパーソイラーSV2―BDにいきついた」と和登氏。

同機は、30~40PSトラクタ(トラクタ重量1000~1500㌔)に適応する3本シャンクの作業機で、機体寸法は全長900×全幅1400×全高1200㍉。全重230㌔、最大耕幅1300㍉、最大耕深500㍉。振動式のため小型トラクタでもしっかりと作業をこなし、アタッチメントを変えれば各種野菜の掘り取り・収穫、転圧作業などにも対応。ハウス内作業にはうってつけの機種になる。

バイブロスーパーソイラー SV2-BD

水はけよく根張り充実

和登氏は、「栽培が終われば毎回これを使って作業しており、コンパクトにまとまっていて使いやすい機械」と評価。さらに「昨年までは、栽培の後半になってくるとけっこう通路に水が溜まるような状態になるところがあったが、今年はそれがなくなった。それに栽培後半は着果する茎の上部が細くなる傾向があったが、完全とはいえないまでも、それも改善されてきた。それだけ土壌の状態がよくなり、根の張り方が良くなったということだろう」と同機の効用を説く。

根の張りが良くなった土壌

人手不足・コスト高への対応と
自動・遠隔制御化は今後の経営課題

ミニトマトの作業については、誘引、芽かき、生長調整などの管理作業は父と和登氏が行い、収穫と葉かきの作業には通年で8人のパートを雇用している。「最近は結婚しても共働きの家庭が多く、パートさんの成り手は減りがち。また、時給アップの傾向もあり、人手に関しては不足感が強くなってきている」と、今後の経営課題の1つにあげる。

ハウス内には自動灌水装置、自動加温装置、自動天窓開閉装置といった自動環境制御器を備え、今年からは遠隔監視できるシステムにもなった。「自宅が近いので遠隔の意味はあまりないかもしれないが、データを蓄積して栽培に活かす体制を整えたい」と新技術に対する関心は高い。「夜間でも収穫作業を進めるロボットの話は見聞きして興味はある。しかしまだ現実的に導入できる段階ではない」と話すが、今後のパート雇用・人手問題を考えれば、一般農家へのロボット技術の実装は、より早い時期に求めたいというところだろう。

自動環境制御器

土の力を活かして栽培できる優位性

今年はほかの作目と同様、肥料価格その他の高騰が経営を圧迫している。「それでも土耕だからまだいいんです。完全な養液栽培では使用量が格段に異なるからレベルの違うコスト高になる。土耕は土づくりを行い、土の力を活かして栽培できる優位性があります」と和登氏。こうした中では、もちろんバイブロスーパーソイラーの役割も大きい。

現在はまだ父と協議しながらの営農とはいえ、いずれ代替わりの時は来る。その今後を見つつ、「あまり品目を増やすことは考えていない。現状の改善を図り収量アップ、品質アップに努めていきたい。それこそ栽培後半まで樹勢を衰えさせない工夫が大事で、結局土づくりがポイントになるでしょう」と展望した。

農業の面白みは、自分でやっただけ結果が出るところ。手を抜けばその答えが目に見えて出てくるところと和登氏。より高みにある成果を目指して、機械化・装置化を含め技術研究に余念がない。

戸塚さんのハウスで収穫されたミニトマト
ユーザー 戸塚 和登 氏
地域 埼玉県本庄市
主な用途 ミニトマトハウス内土壌の硬盤破砕
機種名 SV2-BD

スーパーソイラー
硬盤破砕・弾丸暗渠仕様ラインアップ

カワベ広報室から

第1回の川辺Web通信では、「ご愛用者の声」として埼玉県本庄市の戸塚さんに製品の活用や生産状況などのお話を伺いました。戸塚さんはハウス3棟でミニトマトを栽培している他にハウスレタスやメロンも栽培されていますが、"父をはじめ家族の協力が心強い"とおっしゃっていましたことが印象に残りました。人手不足やコスト高など課題はいろいろあるともお話しされていましたがより良い成果を目指して機械化・装置化を含め技術研究されており、私どももお役に立てる製品開発・改善を日々続けていく必要性を重く感じました。